野営地

やえいち
「野営地」の話
 例えば、朝。

目が覚めて、鮮やかで生々しい夢の感触の中から少しずつ、重い身体を引き離してゆく。
そこから、日常の生活を、「それはやるべきことである」ということを、思い出すまでの隙間の時間。「生活」というOSがカリカリとプラグインを読み込みながら立ち上がっている空白の時間。


私は、まるで丸裸で広大な荒地に独りで放り出されたような、不安な気持ちで一杯になっている。


今まで自分が大切にしてきたこと、一生懸命取り組んできたことの重みは、みなどこかへ消えてしまっている。いろいろな、ささやかだけど大切な物が置いてあった私のあばら屋はどこか遠くに消えて、周りにいた人々からは、何故だか突然遠くに離されてしまった。私は荒野の真ん中で、裸で横たわっており、何も持っていない。

経験も、技術も、つながりも、何かに対する興味や関心も、欲望も、信じられるものも、何も。

見渡す限りの寂寞とした荒地で、ただ胸の内の、ザワザワとしたノイズのような風の音を聞いている。


もちろん、「日常」というOSが無事に立ち上がれば、それまで荒地の石くれだったものに意味と価値と重みが与えられ、それぞれに網の目のようなリンクが張られ、自分との関係性のパラメーターが復活し、生き生きと色がついて動き出し、ノイズは有意の信号として語り始める。

外へ出て、朝日を浴びて、動き始めた街の音を聞いて、スケッチをしながら、ようやく私は、私であることを、少しずつ思い出す。何をしていて、何が好きで、何が嫌いで、何が、誰が大切で、何が欲しくて、何を苦しんでいて、これから何をするのか。




その荒野は、朝に限らず、唐突に、何の準備も無く、無意味に、私を連れ去る。
人と話している真っ最中、買い物途中の路上、仕事中、家事の途中、まったく時も場所も選ばず、私は突然あの荒野に放り出される。
突然今迄見ていたチャンネルはズレて、今迄そこにいたはずの意味空間との接続は外れ、皆が一体何を話しているのか、今自分は何をしているのか、次に何をすればいいのか、ぽっかりと分からなくなる。




それでも私はあの、荒地に独りで、からっぽで不安に怯えている荒涼とした時間が、私の立っている地面だと思っている。

そこには、何も持って行けない。
それは、裸の人間の時間で、私はそれをとても大事にしたいと思っている。
そして、私にとっての芸術とは、あの荒地で、うずくまって震えているところから、すっくと、おもむろに、独りで、何も手に持たず、裸のまま、まっすぐに立ち上がることだと、その無言の所作そのものだと、思っている。



ここを、私の野営地としよう。
テントも火も、鍋釜も食料も、服すらないけれど。
そこで何度でも、すっくと立ち上がり、そして何度でも転ぼう。



そんな気持ちが、実はこのブログタイトルには込められていたりします。

なにしろ、ぼんやりしてたらすぐに忘れて、あーなんか知らんが気分悪い、調子悪いし面倒だ、酒飲んで寝ちまえと思っちゃうのだ。


おいおい、すっと、おもむろに立つだけだぜ。力みも悲壮な決意も重厚な思想も高邁な理想も何もいらん、理由すらいらん、ただ裸でまっすぐに立ち上がる、その人間の所作だけが、壮絶に美しいんだぜ。だから怯えたり、拗ねたり、面倒くさがってぐでっと寝てんなよ、ちゃんとしろ、オレ。

という自戒も込めて。
| 雑記 | 10:08 |
10月
ここ何年か、何故か10月が一区切りの時期になっている。

HPで続けている、墨によるドローイングのシリーズ〝phantom Catcher〟も、5年目突入。
個展も近いし、スッキリ気持ちを入れ替えて集中しよう。

とはいえ、まだプランも固まってないし、DMも出来てなかったりする。
今回は久々のギャラリーでの展示だけれど、直前までプランを固めずにダイナミックに動かし続けていこうかなと考えている。

変に整理せずに、今出来る精一杯を、ベチャッと叩き付けるような展示にしたいと思う。
| 雑記 | 19:05 |
鼬と猿

朝っぱらから素早い、可愛い。でも、台所にうんこしてくのはやめて下さい。



出勤中に威嚇されてすごく怖かったです。
| 雑記 | 23:47 |
親しいもの
 7月はなんだか呆然と過ごしてたけれど、8月に入って、やっとギアが噛み合って来た感じ。


朝の底抜けの虚無感や、何かが大きく欠落しているような感覚、焦燥感や不安は、相変わらずドカンと僕の中心に居座っているけれど、あんなに長年苦しめられてきたそれらの感覚が、今はなんだかなじみ深くて親しいもののように思えて、頼もしい。
| 雑記 | 23:37 |
唐突に終わる
3月から6月までバタバタと過ごし、7月に入り、一息つく。

5月ぐらいからその予兆はあったけれど、この十年、僕を突き動かしていた何かが、唐突に、決定的に終わった事を感じている。



きっと悪い事ではないのだけれど、今はただ呆然としている。
| 雑記 | 14:00 |
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